Oyako Dosage Profile(ODP)
親子ドサージュ理論
血統評価と言えば、父や母や母の父の競走成績を調べる事だった。
血統は難しく面倒だと思っていた。でも数字なら簡単だ。
そこで自作の血統ソフト「お馬の親子」に
スティーブン・ローマンのドサージュ理論
のドサージュ指数を自動計算する機能を追加してみた。
そしてコンピュータで何頭もの競走馬のドサージュ指数を出してみた。
ところが、日本の馬のドサージュ・プロフィールは
スタミナを表わすSolid、Professionalの値がほとんどゼロになってしまった。
なぜなら博士のシェフ・ド・ラス種牡馬は欧米の競馬を対象にしたもので、
日本の馬に影響力を与える種牡馬が4代血統表には5代目、6代目に出て来ることが多かったからである。 
日本の競馬にドサージュ指数を応用するには指数の改良が必要だった。
1つめは血統表の7代目まで調べてSolid、Professionalの値を求める事だった。
7代まで調べることでスタミナの情報を得る事が出来るようになった。
親子ドサージュの計算方法

例えば シンボリルドルフをを使って4代まで調べた場合の
ドサージュ・プロフィール(DP)は DP:(B= 12 I= 12 C= 8 S= 0 P= 0)
となりスタミナを表わすSolid,Professional指数がゼロになってしまう。
現実的にスティーブンローマンのDPでは日本の競馬では使えない。
●7代まで調べて
そこで1つの改良点は4代ではなく7代まで調べて指数を出すようにした。
シンボリルドルフの7代目まで調べて親子のドサージュ指数(略してODP)とした。
ODP:(B= 68 I= 55 C= 80 S= 16 P= 25)
このようにするとシンボリルドルフから5、6、7代目にいるスタミナを持った種牡馬を
指数に反映する事ができる。
●日本の種牡馬を加える
 2つめの改良点は日本において発展した種牡馬をに加える事だった。
日本の種牡馬を世界の一流種牡馬と同等に評価するのは難しい。
そこでシェフ・ド・ラス種牡馬の5つのタイプ毎に5段階評価をすることにした。
シェフ・ド・ラス種牡馬の1頭ごとに5つの数字の数列を設定した。
数字の配列はDPと同じで左から
Brilliant-Intermediate-Classic-Solid-Professionalの順に並べるのである。
最高値は5で最低値は0である。
==========================================
種牡馬の評価数列(B,I,C,S,P)
==========================================
例えばNasrullahのように世界的にも影響力のあるBrilliant種牡馬には
(5,0,0,0,0)の行列を設定する。
スピードのあるBrilliant種牡馬であるが、
Nasrullahほど世界的に影響力が無い場合は影響力に応じて格差をつけて
(4,0,0,0,0) (3,0,0,0,0) (2,0,0,0,0) (1,0,0,0,0)のようにする。
トップクラスのIntermediate 種牡馬は(0、5、0、0、0)
トップクラスのClassic 種牡馬は(0、0、5、0、0)
トップクラスのSolid 種牡馬は(0、0、0、5、0)
トップクラスのProffessional種牡馬は(0、0、0、0、5)
IntermadiateとClassicの中間型は
(0、2、3、0、0)(0、3、2、0、0)のように5ポイントを2つに振り分ける。
配分については、成績、繁殖成績で判断する。
このようにシェフ・ド・ラス種牡馬の数列を設定しておいてから、
親子ドサージュ指数(ODP)を計算する。

代目 1 2 3 4 5 6 7
影響力 64 32 16 8 4 2 1

計算方法は少し複雑になる。基本的には行列計算をする。
例えば3代目と4代目にNasrullah(5,0,0,0,0)がいる場合まず上の表の影響力を乗じるので
3代目のNasrullah(5,0,0,0,0)x16=(80,0,0,0,0)
4代目のNasrullah(5,0,0,0,0)x 8=(40,0,0,0,0)
--------------------------------------------
        合計 (120,0,0,0,0)
最後に合計した数列を5で割ると(120,0,0,0,0)/5=(24,0,0,0,0)
親子ドサージュプロフィールが求められる。
計算方法は複雑になったが、コンピューターで自動的に計算してくれるので問題はない。
これで日本の種牡馬を考慮して内国産の馬についてもある程度評価ができるようになった。    

Brilliant Brilliant値を親子ドサージュ指数ではB値と呼ぶことにする。
B値は短距離でのスピードや瞬発力を表わす。B値の高い馬の特徴は次の通りである。
1)スピードに優れている。
2)短い距離での加速力がある。瞬発力に優れている。
3)気性が激しい馬が多い。
4)成績にムラが多い。
5)短距離の逃げ竰込馬のタイプが多い。
6)スタミナに欠ける。
7)距離適正は1000mー1400m。
8)早熟が多い。
競馬のスピードのタイプには瞬発力型と持続力型がある。
瞬発力型は追込馬や差し馬に多い。
一瞬の切れ味をもっていたり、直線に入って鮮やかに差しきる馬だ。
瞬発力は短い時間にのみ発揮される。
そのため、レース展開に左右されやすい欠点を持っている。
スローペースで最後の直線勝負になった時は、瞬発力を生かすことができる。
ハイペースやミドルペースでは最後の直線までにエネルギーを使ってしまい、
持ち味を出せないまま負けてしまうこともある。
B値だけが異常に高い馬は、スタミナに欠け、成績にムラが多いので注意しよう。
直線の短いコースだとこの瞬発力が生きる。中山競馬場向きだ。
スプリンターズSに勝ったヒシアケボノはB値が92だった。
Intermediate

Intermediate値を親子ドサージュ指数ではI値と呼ぶことにする。
I値はマイルから中距離を得意とするスピードを表わす。
B値ほど爆発的なスピードではないが、スピードを持続出来るのが特徴だ。
1)速いスピードを持続出来る。
2)Brilliantよりは距離が伸びてもバテない。
3)先行差しのタイプが多い。
4)距離適正は1600mー2000m。
このタイプの種牡馬に英2000ギニー(距離1600m)の勝ち馬が多い。
そのため直線の長いコースでストライドを大きく取りぐいぐいと伸びて来るタイプはI値が高い。
B値とI値が共に高ければ、スピードがあり、それを持続出来るので、
かなり有望なマイラーになれる。直線の長い東京競馬場向きである。
I値が高い馬にオグリキャップ、シンボリルドルフ、ビワハヤヒデなどがいる。

Classic Classic値を親子ドサージュ指数ではC値と呼ぶことにする。
この指数はクラシックに強いことを表わす。距離は2400mのダービーが一番得意だ。
しかしダービーだけでなく3歳クラシックや大レースでは
マイルでも長距離でもこのC値が高い馬が好走する傾向がある。
距離の範囲を越えて、グレードが高い血統であることを表わす。
1)3才クラシックや大レースに強い。
2)距離適正は2400m。
C値の高い馬にナリタブライアン、フサイチコンコルドがいる。
Solid Solid値を親子ドサージュ指数ではS値と呼ぶことにする。
スタミナを表わす。また安定を意味する。
1)長距離のレースに強い。
2)スタミナがある。
3)安定した成績を残す。
4)徐々にペースを上げて最後にラストスパートするレースが得意。
5)逃げて、一定のペースを最後まで崩さないレースをする馬もいる。
6)瞬発力が無いので極端なペースに弱い。
7)気性は素直で落ち着いている。
8)重馬場に強い馬が多い。
9)距離適正は2400mー3200m。
10) 晩成である。
Proffessional Proffessional値を親子ドサージュ指数ではP値と呼ぶことにする。
この指数もスタミナを表わす。Solidとほとんど特徴が似ている。
Solidよりもスタミナが豊富で、3000m以上の長距離で活躍する。
Dosage Index

ドサージュのスピードの数値をスタミナの数値で割ったものが Dosage Index(DI)である。
計算式は次の通り。
DI=(B+I+(1/2)*C)/((1/2)*C+S+P)

スタミナに対するスピードの比率を表すので,大きいほどスピード寄りの血統であるといえる。
DI値はスピード値とスタミナ値が同じ場合は1.0となる。
親子ドサージュ値のDI値の傾向は次の通りである。 
●2.0以上はスピード馬
スプリンターズS(1980年から1995年まで)の平均DI値は1.94である。
勝ち馬16頭をDI値ごとに調べてみると

DI値 勝ち馬数
2.0以上
1.5以上2.0未満
1.0以上1.5未満
1.0未満

G1になってからの勝ち馬で2.0以上の馬は次の通り
バンブーメモリー 2.15
サクラバクシンオー2.03
ヒシアケボノ   2,27

●1.0以下はステイヤー
春の天皇賞の勝ち馬(1981年から1996年まで)の平均DI値は1.20である。
勝ち馬16頭をDI値ごとに調べてみると

DI値 勝ち馬数
2.0以上
1.5以上2.0未満
1.0以上1.5未満
1.0未満

1.0以下の勝ち馬は以下のとおりでステイヤータイプはDI値の低い馬が多い。
カツラノハイセイコ0.98
モンテプリンス  0.55
モンテファスト  0.55
ミホシンザン   0.73
メジロマックイーン0.82

Center of Distribution

CD値はドサージュ値のバランスを表す。ドサージュ値のバランスの中心がどこにあるかを数値で示したもの。
数式は次の通りである。
CD={(2*B)+IーSー(2*P)}/(B+I+C+S+P)  

CD値は−2.00から+2.00までの範囲の値を示す。
CDが+2.00に近い場合はB(Brilliant)の特性を示す。
CDが−2.00に近い場合はP(Proffessional)の特性を示す。

●CD値0.5以上はスピード馬
スプリンターズS(1980年から1995年まで)の平均CD値は0.55である。
勝ち馬16頭をCD値ごとに調べてみると

CD値 勝ち馬数
+1.5以上+2.0未満 
+1.0以上+1.5未満
+0.5以上+1.0未満  12
0.0以上+0.5未満 
-0.5以上-0.0未満
-1.0以上-0.5未満
-1.5以上-1.0未満
-2.0以上-1.5未満 

●CD値マイナスはステイヤー  
春の天皇賞の勝ち馬(1981年から1996年まで)の平均DI値は0.18である。
勝ち馬16頭をCD値ごとに調べてみると

CD値 勝ち馬数
+1.5以上+2.0未満
+1.0以上+1.5未満0
+0.5以上+1.0未満 
0.0以上+0.5未満 
-0.5以上-0.0未満
-1.0以上-0.5未満
-1.5以上-1.0未満
-2.0以上-1.5未満

CD値がマイナスになるとかなりのスタミナ馬である。

ODPと距離適性


血統と馬券を結びつけたいと願うのは血統を勉強してくると誰しも思うことである。
応援している馬や賭けている馬が未知の距離を走る場合,
血統から距離適性を計ることは知らないよりはましであるし,
時として,馬券上有利な事がある。
そこで親子ドサージュ値で距離適性を把握する事が出来るのだろうかと考えて
過去10年の重賞勝ち馬のODPの平均を調べてみた。

距離  B I C S P DP DI CD データ数
1000-1400 62.4 38.3 78.0 25.8 16.5 220.9 1.78 0.46 176
1401-1800 59.3 35.9 78.5 26.2 17.9 217.8 1.69 0.42 351
1801-2200 55,.5 35.4 76.4 26.7 19.0 212.9 1.60 0.37 345
2201-3600 51.5 34.4 85.1 28.2 18.8 218.0 1.50 0.31 179

上の表は1987年から1996年までのJRAのグレードレースの勝ち馬の
親子ドサージュ値の平均をレースの距離別に計算したものである。
ドサージュ理論の提唱する距離適性が実際のレースで証明されたと言える結果である。
表からも分かるように短距離にはBI値,長距離にはSP値の高い馬が活躍していることが分かる。
もし短距離のレースを予想するときにはBI値の高い馬に注目してみよう。
また中長距離になれば,BI値は低くてもSP値の高い馬をチェックすることは大切だ。