近交係数理論
近交係数表 G1馬の近交係数
インブリードとアウトクロスは相反する言葉ではあるが,サラブレッドの配合ではお互いの配合の長所を延ばし,短所を補うことによって優駿を作ることが出来る。
一般的にインブリードは遺伝力があるが,近交弱勢によって競走能力が低下する。逆にアウトクロスは遺伝力はないが雑種強勢で競走能力を高める。
そこで遺伝力があって,競走成績も優秀である馬を持続的に生産するにはインブリードとアウトクロスをうまく使いこなせるかが鍵となる。
遺伝学の本に出てくる近交係数を求めてみると,インブリードの強さを知ることが出来る。
また逆に近交係数が低い場合はアウトクロスになる。
そこでこの近交係数を使って配合を行うという研究が行われていた。
農学博士宇田一氏は昭和40年代に近交係数を使ってサラブレッドの配合を研究した。
関連係数によりR型とr型
近交係数によりF型とf型
に分けた4つの系統型を使った理論であるが,現代のサラブレッドのほとんどがR型を示す関連係数については省略し,近交係数に絞って博士の理論を説明する。
博士は近交係数の数値により2つのカテゴリー分けた。
f>=0.008 をF型
f<0.008 をf型
F型はインブリード型でf型はアウトクロス型だ。
註:博士の近交係数の計算方法は現在のWrightによる計算方法と違う。
現在の計算方法では基準値は0.008ではなく0.016である。
産駒の系統型と両親の系統型の組み合わせは次の6通りである。
両親の系統型 | 産駒の系統型 | |
1 | FxF | F |
2 | Fxf | F |
3 | fxf | F |
4 | FxF | f |
5 | Fxf | f |
6 | fxf | f |
2)と5)の交配形式がインブリードとアウトクロスを使った望ましい交配で「基準交配」と呼ぶ。
「基準交配」はインブリードの近交弱勢とアウトクロスの遺伝力の弱さを避け,遺伝力があり,競走にも強い馬を生産する目的の交配形式である。
1)の型はインブリード馬同士からインブリード型を作る交配形式で遺伝力が一番期待できるが,近交弱勢の影響をもっとも受けやすい。
3)の型はアウトクロス馬同士の配合からインブリード馬を作る交配形式で優秀な競走馬としての型。
4)の型はインブリード馬同士の配合からアウトクロス馬を作る交配形式で優秀な競走馬としての型。
6)の型はアウトクロス馬同士の配合からアウトクロス馬を作る交配形式である。遺伝力も少なく,競走能力も高くないので望ましい配合ではない。
●「基準交配」を継続的に行うことが望ましい。
2)で生産された馬には5)を配合する。
5)で生産された馬には2)を配合する。
基準交配 | F | F |
f | ||
f | F | |
f |
配合の天才フェデリコ・テシオ氏の生産したネアルコはまさに「基準交配」を繰り返して出来た名馬である。
NEARCO 近交係数3278
NEARCO
■3278 |
PHAROS
■3644 |
PHALARIS
●2213 |
SCAPA FLOW
■3741 |
||
NOGARA
◎1227 |
HAVRESACⅡ
★10144 |
|
CATNIP
●2310 |